抄録
我々は、根毛形成を正に制御するR3タイプのMyb遺伝子であるCAPRICE(CPC)遺伝子が、非根毛細胞から根毛細胞に移行することをGFP遺伝子との融合遺伝子をもった形質転換体の解析より既に報告している。次にCPC+GFP融合遺伝子を異所的に発現させたところ、根毛細胞から非根毛細胞には移行できるが、中心柱の細胞層から表皮細胞層には移行することはできなかった。我々はCPCの細胞間移行機構を解析する為に、まずCPC蛋白質内の移行に関わる領域を二ヶ所同定した。酵母two-hybrid スクリーニングにより移行に関わる因子を検索するとともに、CPC+GFP形質転換体を変異原処理した植物体の中よりGFPの蛍光のパターンが異常になったものを探索している。またCPCホモログ遺伝子産物の細胞間移行能についても比較・考察をおこなっている。
別の表皮細胞分化決定因子であるbHLH蛋白質をコードするGLABRA3(GL3)遺伝子は根毛細胞で強く発現しているが、機能欠失型のgl3突然変異体では非根毛細胞が根毛細胞に変換されていた。GL3+GFP融合遺伝子をもった形質転換体では、GFPの蛍光は根のすべての表皮細胞の核で観察されたので、GL3も細胞間移行をすることが示唆された。
以上の結果より、表皮細胞分化における制御因子の細胞間移行の機構について考察をおこないたい。