日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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D2タンパク質に部位特異的変異を導入した好熱性ラン藻の光化学系II:TyrDの役割
*杉浦 美羽Fabrice RappaportKlaus Brettel野口 巧A. William RutherfordAlain Boussac
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p. 008

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抄録

光化学系IIにはredox activeなTyrZおよびTyrDがそれぞれD1およびD2タンパク質に存在する。これらはP680から約13 Åの対称な位置に局在し、それぞれの近傍にあるHisと水素結合している。TyrZはMnクラスターからP680へ電子移動を仲介するのに対し、TyrDの役割は不明である。
本研究では、His189との水素結合を除去してTyrDをredox inactiveにする為に、D2-Tyr160をPheに置換した部位特異的変異体を作製し、特徴付けを行った。無傷で熱安定な試料を得るために、宿主細胞には好熱性ラン藻Thermosynechococcus elongatusを用いた。変異株の細胞増殖速度は野生株の約2倍遅かったが、S3→S0への酸素放出キネティクスは同じであった。P680+の5 ns毎の閃光照射に伴う吸光度変化測定では、PD1+PD2とPD1PD2+の平衡が左側へシフトしていることを示唆した。また、P680+/P680 FTIR差スペクトルでは、変異によってP680のカルボメトキシC=O伸縮振動のバンドが短波数へ約10 cm-1シフトしていた。更に、変異株のTyrZ→P680+への電子伝達速度は野生株の1.2倍速くなっていた。これらの結果から、TyrDはP680+の正電荷の平衡を制御してTyrZ→P680+への電子伝達速度をコントロールしているものと考えられる。

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© 2005 日本植物生理学会
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