日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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黒穂菌感染によるヒロハノマンテマ雌花のオス化現象と花形成遺伝子の発現解析
*風間 裕介小泉 綾子内田 和歌奈Amr Ageez河野 重行
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p. 019

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抄録

ヒロハノマンテマXY型の性染色体をもつ雌雄異株植物である。ヒロハノマンテマに黒穂菌が感染すると、葯には花粉ではなく胞子が形成される。雌花(XX)に黒穂菌が感染した場合でも雄蕊が誘導される。低真空SEMで観察すると、ステージ7までは正常雌と感染雌は同じで、中央に雄花よりも大きい雌蕊原基、その周りに雄蕊原基をつける。ステージ8では正常雌の雄蕊原基の伸長は起こらないが、黒穂菌感染雌の雄蕊は伸長する。形態観察に基づいて、各ステージにおけるB機能遺伝子PISTILLATAのオーソログ、SLM2の発現をin situ ハイブリダイゼーションで調べた。シロイヌナズナのPISTILLATAは雄蕊と花弁で特異的に発現する花形成遺伝子である。ステージ7までは、SLM2は、正常雌花と黒穂菌感染雌花ともに、予定花弁領域 (Whorl 2)と予定雄蕊領域(Whorl 3)で発現していた。ステージ8の正常雌花では、雄蕊の抑制とともに、SLM2の雄蕊原基での発現が抑制されていた。しかし、黒穂菌感染雌花では、雄蕊原基と花弁原基で同等のシグナルがえられた。黒穂菌感染雌花におけるSLM2の発現は擬似葯の成熟が完了するまで続いた。 正常雌花の雄蕊ではSLM2の発現が抑制され、その結果雄蕊の伸長が抑制されると考えられる。SLM2の発現抑制はY染色体の存在に関わらず黒穂菌感染によって解除されることが明らかとなった。感染雌の葯における雄性生殖器官の発達過程を調べるため、葯の成熟に関わる遺伝子群を単離している。

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© 2005 日本植物生理学会
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