日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
水田用自動抑草ロボットの活用による雑草抑制効果と水稲収量への影響
中村 哲也浅見 秀則磐佐 まりな藤井 義晴大川 泰一郎
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2024 年 93 巻 1 号 p. 31-37

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抄録

有機水稲作においては雑草防除に係る労力負担が非常に大きく,雑草害が主要な減収要因であることから省力・安定的な雑草防除技術の開発が求められている.本研究では,太陽光を動力としてGPSで水田内を無人航行する水田用自動抑草ロボット(以下,抑草ロボット)の雑草抑制効果および水稲収量への影響を2か年計 36地点の有機水稲圃場で検証した.抑草ロボットの導入により,生産者慣行の機械除草回数は平均で58%減少した.一方,抑草ロボット走行後の平均推定雑草乾物重は16.6 g m–2で,水稲の収量には影響しない程度の防除水準であった.抑草ロボットの防除効果は一年生雑草であるノビエやアゼナで高く,多年生雑草であるクログワイやオモダカで低くなる傾向であった.抑草ロボットの稼働期間が水稲移植直後から3週間程度であるため,発生期間が長い多年生雑草には効果が低く,多年生雑草の発生圃場では抑草ロボット引き上げ後に機械除草等の物理的な防除が必要であると考えられた.また,実証試験地の水稲平均収量は424 g m–2であり,生産者慣行と比較して平均10%の増収が確認された.以上より,抑草ロボットは除草労力を削減しつつ有機水稲作の収量を確保する新たな除草ツールとして有効であると考えられた.ただし,抑草ロボットが安定的に稼働するためには圃場水位を一定以上に保つ必要があり,圃場の均平化や用水の安定供給が導入条件として重要であった.今後は,抑草ロボットの雑草防除メカニズムや水稲収量の増加に寄与した要因を解析し,効果的な抑草ロボットの運用法や適用範囲の解明を目指す.

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