抄録
水生異型葉植物Ludwigia arcuataは陸上では丸葉の気中葉を、水中では細葉の水中葉を形成する。これまでの解析から、3番目に若い葉は形態形成の可塑性を保持しており、この葉の基部は環境変化に応じて形態変化出来ることが示されている。本研究では、L. arcuataの葉形が横軸方向に配列する表皮細胞の数によって決定されることから細胞分裂に着目し、若い葉の基部が示す形態形成の可塑性の実体の解明を目指した。葉の横軸方向に並ぶ細胞数は、葉組織内での細胞分裂面の角度の分配に依存すると考えられる。L. arcuataではエチレンによって葉の横軸方向に並ぶ表皮細胞の数が減少することから、エチレンが葉組織内での細胞分裂面の角度に影響を与える可能性を検討した。葉組織内での形成直後の隔壁を検出し、葉の長軸方向に対する隔壁の角度を計測した。葉の全体で見ると、エチレン添加後48時間目から、葉の長軸と平行な細胞分裂面の割合が減少することが明らかになった。葉の部位ごとに見ると、葉の基部では葉の長軸に直角な細胞分裂面の割合が増加する一方、葉の中央部付近では葉の長軸に平行な細胞分裂面の割合が減少していた。エチレンに対する応答が葉の部位によって異なるのは興味深い減少である。このようにL. arcuataではエチレンによって細胞分裂面の方向が制御を受け、葉形が決定されることが明らかになった。