日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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タバコ培養細胞BY-2における染色体分配様式の解析
*林 朋美朽名 夏麿佐野 俊夫馳澤 盛一郎
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p. 157

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抄録
複製された染色体を娘細胞に正確に分配することは細胞分裂の主要な過程であり、紡錘体微小管が担っている。分裂後期の染色体の移動は紡錘体微小管の挙動により二つの過程からなる。一つは染色体が極方向へ移動する後期Aであり、もう一つは両極が離れることにより染色体が移動する後期Bである。高等植物細胞では紡錘体の極が不明確なこと、紡錘体の伸長が動物細胞と比べて顕著でないことから、後期Bの過程の存在は定かでなかった。我々は高等植物細胞の後期の染色体分配様式を明らかにするため、生細胞において微小管と細胞核を同時に可視化したタバコ培養細胞BY-2の形質転換株BY-GTHR(GFP-tubulin、histone-RFP)を確立した。BY-GTHR細胞により細胞周期を通じて細胞核構造の変化に伴う微小管構造の動態の観察が可能になり、分裂後期の紡錘体と染色体の挙動を動画像として数秒のオーダーでとらえることができた。さらに各種画像処理プログラムを開発し、得られた動画像から紡錘体の伸長と染色体の位置変化を定量化した。その結果、染色体の分離過程において明確な染色体の極方向への移動(後期A)に加え、染色体移動開始後に紡錘体伸長が始まったことから後期Bの存在が明らかになった。すなわち高等植物細胞の分裂後期の染色体の移動は、極方向へ向かう動きである後期Aが先に起こり、続いて極方向へ向かいつつ極同士が離れていく後期Aと後期Bが重複した過程が存在すると考えられる。
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© 2007 日本植物生理学会
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