抄録
双子葉植物に比べ、単子葉植物では維管束形成に関する分子機構の研究が少ない。双子葉植物の葉の展開が二次元的であるのに対して、単子葉植物では葉の展開がほぼ一次元的であり、その伸長に携わる細胞分裂領域は基部に集約される。このため、単子葉植物では、葉の先端側から基部側に向けて観察することで維管束分化・形成過程を遡って連続的に追跡できる。そこで本研究では単子葉植物のモデル植物であるイネを用いて維管束形成機構の解析を進めた。
まず、野生型のイネを用いて第五葉の葉身部の透明化処理による観察、及び発芽後14日後の基部領域を用いた連続切片の観察から、葉身・葉鞘における維管束パターン及び維管束内部構造の形成過程の詳細な観察を行った。この野生型の観察から得られた表現型との比較をもとに、維管束形成に異常を示す突然変異体の探索を行い、葉身・葉鞘における維管束パターンに異常を示す突然変異体として11系統を、維管束内部構造に異常を示す突然変異体として1系統を単離した。維管束形成過程における野生型と突然変異体の表現型の比較を通して、イネの葉における維管束形成機構について考察する。