日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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カスパーゼ活性をもつ液胞プロセシング酵素が過敏感細胞死を制御する
*初谷 紀幸黒柳 美和山田 健志飯 哲夫西村 いくこ西村 幹夫
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p. 091

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抄録
植物は病原体の感染に対する生体防御機構として過敏感細胞死を誘導する.過敏感細胞死はプログラム細胞死(PCD)であるが,その実行機構は明らかにされていない.動物のPCDでは,カスパーゼを実行因子とする機構が知られている.植物のPCDにも動物のカスパーゼに類似する酵素が関与すると考えられてきたが,植物からカスパーゼのホモログは見つかっていない.我々はTMVの感染で誘導されるタバコの過敏感細胞死について解析し,液胞プロセシング酵素(VPE)が過敏感細胞死で誘導されるカスパーゼ-1活性を示す実体であり,過敏感細胞死に関与することを報告した(日本植物生理学会2004年年会).今回,VPE遺伝子をジーンサイレンシング(VIGS)した植物体を作製し,過敏感細胞死におけるVPEの役割について解析した(1).VPE遺伝子をVIGSした植物では,VPE活性とともにカスパーゼ-1活性も低下しており,TMVの感染による過敏感細胞死が起こらなかった.これは液胞内のプロテアーゼであるVPEが過敏感細胞死において重要な役割を担っていることを示している.TMVに感染した細胞が死に至る過程を詳細に観察したところ,細胞死に先立って液胞膜の一部が分解されることがわかった.VPE遺伝子をVIGSした植物では,液胞膜の分解が起こらないことから,VPEが細胞死の実行過程で液胞膜の分解を引き起こし,これによって細胞は死に至ることが考えられる.(1) Hatsugai et al. (2004) Science, 305, 855-858.
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© 2005 日本植物生理学会
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