抄録
高等植物の不定根および側根の形成には、主に地上部から輸送されたオーキシンが促進的に機能していることが知られているが、詳細な機構についてはほとんど明らかにされていない。そこで我々はシロイヌナズナを用いて、側根を形成しないが無傷植物体で不定根形成がみられる突然変異体ar-C22を単離し、表現型の解析及び原因遺伝子の同定を行った。ar-C22は主根および胚軸の維管束細胞が少なく、側根を形成しないが、正常に維管束が発達し分岐する不定根の形成がみられた。ar-C22の胚軸維管束にはオーキシン蓄積がみられ、主根にオーキシン処理をすることにより側根が形成された。遺伝子のマッピングと相補試験の結果、ar-C22はサイトカイニン受容体AHK4 (AHK4/CRE1/WOL) のミスセンス突然変異体であることがわかった。また、AHK4に加え、他のサイトカイニン受容体として知られているAHK2, AHK3は、胚軸において維管束に発現がみられた。さらに、三重突然変異体ahk2ahk3ahk4ではar-C22と同様の根の形態を示した。以上の結果から、ar-C22および三重突然変異体ahk2ahk3ahk4では、胚軸においてAHK2~4全ての機能が低下し、オーキシンの輸送が抑制されて胚軸に蓄積されたことにより、側根形成の抑制、不定根形成の誘導が起きたと考えられた。