日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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アグロバクテリアのオンコジーンであるTmrは宿主植物のプラスチドに局在する
*上田 七重小嶋 美紀子武井 兼太郎笠原 博幸山口 信次郎神谷 勇治山谷 知行榊原 均
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p. 097

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抄録
アグロバクテリウムが植物に感染すると、Ti-plasmid上のT-DNA領域が宿主細胞の核ゲノムに組み込まれる。このT-DNA領域にはTmrと呼ばれるサイトカイニン(CK)合成酵素adenosine phosphate-isopentenyltransferase (IPT)やオーキシン合成酵素がコードされており、両ホルモンの過剰生産によるホルモンバランスの崩壊により細胞の腫瘍化が誘導される。アグロバクテリウム感染後の植物細胞におけるCK生合成経路を明らかにするために、我々はTmrの生化学的特性と細胞内局在性を、シロイヌナズナのIPT (AtIPT)のそれと比較した。Tmrをシロイヌナズナで過剰発現させると、trans-zeatin (tZ)型のCKのみが蓄積したのに対し、AtIPT1, 3, 4, 5, 7の過剰発現株においてはisopentenyl-adenine型のCKが蓄積するという結果が得られた。またin vitroでTmrはDMAPPとHMBDPに対するKm値がほぼ同じであり、両者を基質として利用できるのに対し、AtIPTは専らDMAPPを基質とした。また、予想外にもTmrは、明確なトランジットペプチドを持たないにもかかわらず、宿主植物細胞のプラスチドに局在するという結果が得られた。以上のことからアグロバクテリウムが感染後、宿主細胞内で発現したTmrはプラスチドに移行しHMBDPを利用してtZ型CKを直接合成している可能性が示唆された。
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© 2005 日本植物生理学会
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