抄録
最近、シロイヌナズナにおける主要な植物ホルモンの1つであるサイトカイニンの受容体はヒスチジンキナーゼ(AHK2~4)であることが明らかにされた。AHKサイトカイニン受容体に加え、AHP(仲介因子)、ARR(レスポンスレギュレーター)から成るHis-Aspリン酸リレー情報伝達系因子の働きにより、サイトカイニンシグナルはAHK->AHP->ARRの多段階リン酸リレー系を介して伝達されると考えられている。このようなリン酸リレー情報伝達系に依存したサイトカイニン初期応答遺伝子としてARR遺伝子群(タイプ-A)がよく知られている。いかしその他の下流標的遺伝子はほとんどわかっていない。そこで、His->Aspリン酸リレー系の下流で働く因子(群)を見出すことを目的に、マイクロアレイを用いたサイトカイニン応答遺伝子の検索を行った。特にリン酸リレー系に依存したサイトカイニン応答に焦点を絞るために、野生株を用いたサイトカイニン応答遺伝子の解析をするだけでなく、リン酸リレー系が恒常的に活性化されているARR21-Cの過剰発現体と恒常的に抑制されているARR22の過剰発現体を併せて用いることでコンビナトリアル解析法を工夫した。本解析の有効性を示しつつ、リン酸リレー系に依存したサイトカイニン応答性遺伝子のゲノムワイドな解析結果に関して報告する。