抄録
アブシジン酸 (ABA) は、ABA 8'-水酸化酵素で8'位を水酸化されると、自動的な環化でファゼイン酸となり不活化する。昨年ABA 8'-水酸化酵素遺伝子 (CYP707A) がシロイヌナズナからクローニングされた。そこでCYP707A3を発現させた昆虫細胞のミクロソームとABAアナログを用い、ABA 8'-水酸化酵素によるABAの認識部位を調べた。
各部位を改変した45のABAアナログを基質とした水酸化反応及び酵素阻害試験を行った。阻害活性が高かったABAアナログに対しては、阻害形式と解離定数を求めた。その結果、酵素の反応部位周辺にあたる8'位と9'位は立体的な制約がある事が判明した。また6位と1'位水酸基は基質認識に必要でない一方で、1位カルボン酸は基質の結合に重要であった。3'位と7'位の改変は結合に大きく影響しなかった。側鎖がアキシアルである5'α,8'-cyclo-ABAは酵素を阻害したのに対し側鎖がエクアトリアルである5'β,9'-cyclo-ABAは阻害能がなかった事から、ABAは側鎖アキシアル型で酵素に結合している事が示唆された。今後はこの知見を元にABA 8'-水酸化酵素に特異的な阻害剤を開発していく予定である。