抄録
ユビキノン(UQ)はミトコンドリアの呼吸鎖の成分であり、キノン骨格とイソプレノイド側鎖より構成される。側鎖長は生物種によって異なり、その長さはプレニル2リン酸合成酵素の特性により決定される。本研究では、G. suboxydansのデカプレニル2リン酸合成酵素遺伝子(ddsA)をイネに導入することで、イネのUQ側鎖長を9から10に改変することを試みた。植物におけるUQ生合成は、ミトコンドリアまたはER-ゴルジ系で行われるとの報告がある。そこで本研究では、ミトコンドリア局在型(S14-DdsA)、ゴルジ体局在型(CTS-DdsA)、細胞質局在型(35S-DdsA)の3種類のDdsA過剰発現イネを作成した。ウェスタン解析により、S14-DdsAイネ及びCTS-DdsAイネについてはDdsAを高蓄積する個体が得られた。一方35S-DdsAイネについては、DdsAを蓄積する個体が得られなかった。S14-DdsAイネ及びCTS-DdsAイネの高発現個体について、葉身のUQ含量をHPLC解析により測定した。CTS-DdsAイネは野生型と差がなかったが、S14-DdsAイネにおいては、UQ-9の大部分がUQ-10に変換していた(UQ-10含量約10μg/gFW)。本研究により、我々は植物で初めてUQ側鎖長を変えることに成功した。得られた結果を元に、イネのUQ生合成について考察したい。