抄録
イネはコムギよりもAl耐性であると言われている。しかし、発芽後4日目の幼植物において、24時間のAl処理を行い日本晴れとET8(Al耐性コムギ)の根伸長を比較したところ、両者の根伸長率に差は認められなかった。 一方、吸水後の種子をAl溶液に直接播種した場合、ET8の初生根形成は50μM Al存在下において顕著に阻害されたのに対し、日本晴れにおいては、150μM Al存在下でも顕著な阻害は認められなかった。従って、イネは、初生根形成過程においてコムギよりも顕著に高いAl耐性を示す事がわかる。初生根形成過程におけるAl耐性を制御するイネ遺伝子を同定するために、日本晴れのTOS17による遺伝子破壊株1020系統を用いて、Al存在下で初生根形成が顕著に阻害されるAl感受性イネ変異体をこれまでに8系統選抜した。T3世代の表現型の分離比を調べた結果、Al感受性個体と非感受性個体が1:3に明確に分離する系統が2系統得られた。これらT3世代を非ストレス条件下で栽培し、成熟個体の草丈、および分げつ数を比較したところ、Al感受性個体、非感受性個体および野生型日本晴れの間に顕著な差は認められなかった。以上の結果より、これらの変異体は、正常な生育能力を維持しているが、初生根形成過程におけるAl耐性を失った劣性変異体と考えられる。