抄録
AtBCB gene (Arabidopsis blue copper binding protein) とNtGDI1 gene (tobacco GDP dissociation inhibitor)のAl耐性機構について植物と酵母の系で解析した。
まず、植物細胞内での局在性をGFP融合蛋白として観察した結果、AtBCB蛋白質は細胞膜上に、またNtGDI1蛋白質は細胞質に小胞として存在した。
さらに非形質転換体(Ler)はAl未処理下ではリグニンの集積はなかったが、処理下では根端部に集積した。一方AtBCB形質転換体では、Al非依存的に常時集積した。また、多重染色顕微鏡観察の結果からは、リグニン集積がAl処理由来の酸化ストレスの抑制と、細胞膜機能の保持に効くことが示唆された。
一方、温度感受性sec19-酵母変異株の相補性試験はsec19遺伝子が酵母でのAl耐性機構に関与すること、この変異をNtGDI1遺伝子が相補することを示した。sec19遺伝子は酵母の小胞輸送系で機能するので、Sec19蛋白質を介した排出機構が耐性に関与する可能性がある。従ってNtGDI1蛋白質も同様の機能を有すると思われた。
これらは、AtBCBがAlの吸収抑制に、NtGDI1が排出促進に関連することを示しており、有機酸以外の新たなAl耐性機構であろう。