日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

傷害に応答して発現するタバコbHLH型蛋白質の機能解析
*児玉 豊大矢 仁志上田 知里山口 夕佐野 浩
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 141

詳細
抄録
傷害を受けた植物は、防御や細胞修復に関わる遺伝子を速やかに発現させる。これまで多くの遺伝子群が単離されたが、機能が未知なものも多く、傷害応答機構の分子機構には未解決な部分が少なくない。私たちは傷害の初期応答を探るため、蛍光ディファレンシャルディスプレイ法によって傷害処理後のタバコから多数のcDNAを単離した。本研究では、そのうちのひとつである機能未知遺伝子WI4の機能解析を行った。
WI4はN末端側にbHLH (basic Helix-loop-Helix)モチーフを持つ。BY2細胞を用いてdual-luciferase asssayを行ったところ、転写抑制活性を持つことが明らかとなった。GFPとの融合蛋白質、および細胞分画によって細胞内局在を解析した結果、WI4は一般的な転写因子のように核や細胞質ではなく、プラスチドに局在することが示された。WI4のmRNAおよび蛋白質の挙動を調べたところ、傷害処理後の葉では、処理後1時間目に傷害葉でのみ、一過的に上昇した。また、光合成器官の葉よりも非光合成器官である茎、根および花で強く発現していた。WI4を過剰に発現させた形質転換タバコは、葉が薄緑で、茎、根および花が形成されず致死性であった。これらの結果から、傷害応答性のWI4はプラスチド局在型の転写制御因子であり、光合成に関わる遺伝子の転写を抑制する可能性が示唆された。
著者関連情報
© 2005 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top