抄録
植物の傷に対する防御機構を明らかにすることは、農業生産において重要な課題である。しかし、その全貌はまだ明らかにされていない。タバコのWRKY型転写因子をコードするWizz (wound-induced leucine-zipper zinc-finger) は、傷害初期に発現する遺伝子として当研究室で単離された。傷害に応答した発現を調べるために、Wizzプロモーターとルシフェラーゼ(LUC)を組み込んだ株と35Sプロモーターで過剰発現させた株を作成した。それぞれを傷害処理し、LUC活性をVIMカメラで測定、比較した。さらに、Wizzプロモーター上のシス配列を探索した。その結果、プロモーター領域を270bpまで縮めても転写が起きることが明らかになった。そこでLUCをレポーター遺伝子としプロモーター領域をさらに縮めたランスジェニック体 (-217::LUC、-155::LUC、-97::LUC、および-TATA::LUC)を作成し、最小領域の特定を検討している。Wizzの標的、あるいは制御下にある遺伝子を同定するために、過剰発現株を作製し、マイクロアレイのスクリーニングをおこなった。使用したマイクロアレイは、N. sylvestrisから単離した約4000の単一遺伝子と当研究室で以前に単離された48の病傷害応答遺伝子を含み、現在、解析中である。