抄録
植物の細胞伸長の方向は植物表層微小管の配向により制御されていると考えられている。
シロイヌナズナのspiral3 (spr3) 変異株は体軸がねじれるために、葉器官が反時計方向に回転して見え、根は寒天培地上を右方向に向かって伸長し、根の表皮細胞は右巻きにねじれる。spr3変異株の根の伸長領域における表層微小管は野生型に比べるとやや左肩上がりの配向を示していた。マップポジションをもとに単離されたSPR3は動物やカビで報告されているγ-tubulin ring protein 84(Grip84)と高いホモロジーを示した。Grip84はγ-tubulinやGrip91などから成る微小管重合開始点の機能をもつγ-tubulin ring complex(γ-TuRC)の一サブユニットである。spr3変異ではGripタンパク質ファミリーに高度に保存されたモチーフの保存性の高いアミノ酸残基が置換していた。spr3変異株の表現型は微小管形成機構の異常が微小管の動態ひいては微小管の配向に影響を与えることを示唆している。
現在、野生株及びspr3変異株におけるγ-TuRCの解析を行っている。