抄録
動物・酵母の小胞輸送に機能するタンパク質が次々に明らかにされていく中、高等植物から対応する遺伝子群を単離同定する試みが進められ、SNARE複合体に関与する遺伝子がシロイヌナズナ、タバコ、マメ科植物などから単離されている。我々はマメ科植物のミヤコグサ(Lotus japonicus)の根粒形成に発現するSNAREタンパク質を検索し、そのタンパク質の機能解析を行うことを目的とした。根粒で強く発現しているSNARE遺伝子を検索した。その結果、1つの遺伝子(Sn6)が他の器官に比べ根粒で強い発現を示した。In situ hybridizationの結果、根粒形成初期過程では根粒原基の周辺で発現しており、根粒が成長すると皮層細胞の部分で強い発現を示した。Sn6遺伝子は酵母の小胞体からゴルジ体への小胞輸送に関わるSed5遺伝子と高い相同性がみられた。次にSn6タンパク質の機能解析を目的としてSn6遺伝子の発現を抑制したミヤコグサと過剰発現したミヤコグサを作製した。その結果、アンチセンスミヤコグサT1種子の重さは非形質転換体に比べ約60-70%だった。アンチセンスT1種子を播種し感染後の生育を調べると、非形質転換体に比べ生育が遅く、この根粒を組織染色すると根粒皮層細胞が細胞内に入り込んだ様な現象が観察された。現在マクロアレー解析を行い、どのような遺伝子群の発現が増加・減少しているのか調べている。