日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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S-ニトロソグルタチオン代謝を改変したシロイヌナズナの解析
*坂本 敦橋本 愛美奥田 佳名子松原 俊之高橋 美佐森川 弘道
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p. 189

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抄録
 S-ニトロソチオール (SNO) は,一酸化窒素 (NO) をはじめとする活性窒素酸化物 (NOx) とチオール化合物の反応で生じるレドックス活性分子である。代表的な生体 SNO である S-ニトロソグルタチオン (GSNO) は,動物の NO シグナリングに関わる生理活性物質で,新規なタンパク質機能の調節機構である Cys 残基の S-ニトロソ化を媒介するといわれている。植物におけるその実体や生理作用は不明であるが,SNO は私たちが発見した未解明窒素化合物の物質的基盤を説明する分子群の1つとして数えられる。2,3-ジアミノナフタレンを用いた蛍光法により,NOx 処理したシロイヌナズナでは SNO レベルが著しく増大し,その多くは高分子量画分に回収されることが分かった。植物で唯一報告されている SNO 代謝関連タンパク質である GSNO 還元酵素 (GSNOR) を過剰発現させたシロイヌナズナでは,SNO レベルが著しく低下するとともに,NOx 処理による SNO レベルの上昇も抑制された。一方,シロイヌナズナの GSNOR 遺伝子破壊株では,SNO レベルが増大するとともに,顕著な生育阻害が観察された。以上の結果は,GSNOR が植物における SNO 代謝の鍵酵素であること,またその生理学的重要性を強く示唆する。
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© 2005 日本植物生理学会
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