抄録
我々は、植物体内に取込まれた二酸化窒素 (NO2) あるいは硝酸由来の窒素の約三分の1が、ケルダール法によって定量的に回収されない窒素 (UN) へと変換されること見いだした1)。これまでに同定されたUNを含む化合物 (UN 化合物) のなかで、UN化合物Aは、硫黄原子一個と窒素原子二個および炭素原子二個からなるヘテロ五員環化合物(Δ2-1,2,3-チアジアゾリン誘導体) 2)であった。本化合物は鈴木らにより構造決定されたが、SciFinderで検索できない新規化合物であることが分かった。我々は、このチアジアゾリン化合物は、植物における窒素代謝と硫黄代謝の合流を示す化合物ではないかと考え詳細な調査を進めている。本化合物の全合成はまだ成功していない2)。しかし、チアジアゾリン環内にオレフィン結合をもつ有機合成的な中間体は合成されているので、本中間体を植物に添加、抽出しLC/MSおよびNMR法などにより解析を進めている。これらの結果について報告する。
1) H. Morikawa et al., (2004) Planta 219:14-22
2) K. Miyawaki et al., (2004) Org. Biomol. Chem. 2: 2870-2873