抄録
乾燥・強光ストレス下の植物は、酸化や高温などのダメージに対処するために種々の分子応答を行う。本研究では、C3光合成型の乾燥・強光耐性植物である野生種スイカ(Citrullus lanatus sp. No101117-1)の葉を用いて、ストレス下におけるタンパク質の挙動をプロテオミクスの手法を用いて明らかにした。強光下で生育した野生種スイカの葉の可溶性および膜タンパク質を二次元電気泳動により分離したところ、総数で約900個のタンパク質スポットが検出され、そのうちの約9%のタンパク質の蓄積量が乾燥処理を施すことにより増加し、また約3%は減少した。それら増減タンパク質を質量分析器により解析した結果、増加したタンパク質の約4割は、ヒートショックプロテイン(HSP)であり、全5ファミリーを含む19種類が同定された。このようなHSPの挙動は他の植物において報告がなく、野生種スイカが高温や酸化等によるタンパク質変性を抑制・修復する能力に優れていることを示唆している。そのほかの増加タンパク質として、抗酸化酵素、タンパク質合成・分解関連因子、シグナル伝達因子などが同定された。また、small G proteinのRabとArfが10倍以上増加しており、共同してストレス下の小胞輸送に関与していると思われる。以上の結果より、野生種スイカが乾燥・強光ストレスに対する特殊な防御機構を発達させていることが示唆された。