抄録
シロイヌナズナのDREB2Aタンパク質は乾燥・塩・低温などのストレス応答に関与する遺伝子発現を制御するシス因子DREに結合する転写因子である。DREB2Aを植物中で過剰発現しても、形質の変化は見られず、DREB2Aの活性化にはストレス時に起こる翻訳後のタンパク質の修飾が必要であると考えられている。
本研究ではトウモロコシよりDREB2A相同性のZmDREB2Aを単離した。2種類のcDNAが得られ、このうちひとつはイントロン含んでいた。T87細胞のプロトプラストを用いた実験系でこのcDNAをエフェクターとして転写活性能を調べたところ、DREを介した転写活性がみられなかった。もう一方はイントロンを含まず、プロトプラストの中で非常に強い活性を示した。また、トウモロコシの植物体中のこれらのmRNAのレベルをRT-PCRで解析すると、イントロンを含まないmRNAはストレス時にのみ検出された。このことから、ZmDREB2Aはスプライシングにより活性が調節されている可能性が考えられた。ZmDREB2Aは乾燥や塩ストレスにより発現が増加し、特に急激なストレスをかけたときに強く誘導される。このZmDREB2Aの機能を明らかにするために、この遺伝子を導入した形質転換シロイヌナズナを作成し解析をおこなった。得られた形質転換植物は成長の遅れを示すとともに、乾燥に対する耐性の向上が見られた。また、形質転換植物中で発現が誘導される遺伝子をマイクロアレイ法やノーザン法で解析した。