抄録
SnRK2は植物の水分ストレス応答に関わる重要なプロテインキナーゼとして、近年、注目されている。我々は、シロイヌナズナSnRK2の一つであるSRK2E/OST1が、アブシジン酸(ABA)および浸透圧ストレスにより活性化されること、そして、ABAによる孔辺細胞の閉鎖に強く寄与することを報告してきた。また、SRK2E/OST1の活性化がabi1-1により強く抑制されること、自身のC末端領域がABAによる活性化に重要であること、ABAと浸透圧ストレスによる活性化はそれぞれ異なる経路により調節されていることを昨年の年会にて発表した。今回我々は、そのC末端領域が実際に植物体の水分ストレス適応に強く関与することを明らかにした。急激な湿度低下に対して感受性を示すsrk2eにC末端領域を欠いたコンストラクトを導入したところ、ABA応答に重要な319-357のアミノ酸を欠いたSRK2E/OST1はsrk2eのwiltyの表現型を相補しないことが明らかにされた。また、幾つかのシグナル伝達因子との結合活性を酵母を用いた系で検討したところ、ABI1との強い結合が確認された。興味深いことに、ABI1のSRK2E/OST1への結合部位はABA応答に重要なC末端領域(319-357)であった。この領域は、既に報告されているソラマメAAPKあるいはイネのSAPK8にも保存されており、シロイヌナズナにおいてもSRK2E/OST1に近縁なSRK2D、SRK2Iでも保存されていた。今後、この領域がABAのシグナル伝達にどのように機能するか興味深い。