抄録
チューリップは球根貯蔵中に低温に遭うことで花茎を伸長させ、開花させる。もし長期間の低温処理を施さなければチューリップの花茎伸長は妨げられ、開花した花は異常になるか、もしくは開花しない。
水分生理学的な知見として、低温処理と高温処理でのチューリップの球根の細胞溶液をサイクロメーターによって計測したところ、高温処理を行なった球根よりも低温処理を行なった球根の方が浸透ポテンシャルに貢献する溶質を多く含むことが分かった。その溶質とは、球根が澱粉貯蔵器官であることから、澱粉の分解が低温処理によって進んだ結果生じた糖であると考えられる。
そこで本研究は、低温がチューリップ球根中の炭水化物をどのように変化させるのかを分析するために、それぞれの温度処理を行なった球根の細胞溶液中にある溶質成分をUV-MALDIとESI TOF-MSを使って調べた。さらに低温処理後に植えたチューリップと高温処理後に植えたチューリップの間でそれらの球根内における炭水化物の変化に違いがあるかどうかも分析した。MS分析は澱粉分解から派生した多糖の存在を明らかにした。同時にイオン化の際に現れる付加イオンのK+とNa+の割合が低温処理した球根で、貯蔵中と移植後で変化することが分かった。それはチューリップの花茎伸長または開花のための糖の供給に伴い、特定のイオンの移動および吸収も行われていることを示した。