抄録
光合成炭素固定酵素リブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(RuBisCO)は、推定アミノ酸配列を用いた系統解析から4つのformに分けられる。form IからIIIまでのRuBisCOはCO2を固定する活性を有するが、form IVは触媒に必須の残基のいくつかが別アミノ酸に置換して活性を失っているため、RuBisCO-like protein (RLP)と呼ばれている。枯草菌のRLPはポリアミン合成に関わる硫黄代謝経路で働いており、生態的役割はRuBisCOとまったく異なっていたが、興味深いことにRLPの基質や反応機構はRuBisCOと部分的によく似ていた。そのため、RLPが分子進化の過程で機能変化を遂げ、RuBisCOとなりまったく異なる代謝系で働くようになったのではないかと考えられた。そこでRLPのどのアミノ酸残基が触媒機能に重要なのかを検討すべく、部位特異的変異を導入したRLPの活性をin vivo、in vitroの両系で測定した。その結果、RuBisCOの活性に必須である201番目と175番目のリジン残基に相当するRLPのリジン残基は、RLPの活性においても重要であることがわかった。この結果はRLPが配列だけでなくアミノ酸の機能面でもRuBisCOと類似していることを示しており、RLPからRuBisCOへの進化仮説を強く裏付けた。