抄録
BOR1はシロイヌナズナより単離された排出型ホウ素トランスポーターである。今回、シロイヌナズナのゲノムに存在する6つのBOR1相同遺伝子のうち、BOR2がBOR1と同様に排出型ホウ素トランスポーターであり、ホウ素欠乏条件下での根の伸長に必須であることを明らかにした。
BOR2のcDNAを酵母で発現させたところ、ベクターコントロールと比較して菌体内水溶性ホウ素濃度の低下が見られた。これよりBOR2がBOR1と同様にホウ素の細胞外への排出能を持つことが示唆された。
BOR2のT-DNA挿入株ではホウ素欠乏条件下での根と地上部で生育抑制が観察された。BOR1とBOR2の二重挿入株では一重挿入株のいずれよりも深刻な生育抑制が見られた。この際、BOR2の挿入株の根において細胞の伸長の抑制が観察された。一方、ホウ素十分条件下ではT-DNA挿入株と野生型株において生育に違いは見られなかった。
BOR2遺伝子のプロモーター制御下でGUSを発現する形質転換体の根を観察したところ、根端と皮層細胞でGUSの染色が観察された。
これより、BOR2はホウ素欠乏条件下での正常な生育に必須な排出型ホウ素トランスポーターであることが明らかとなった。輸送体が根において細胞外へホウ素を排出し、細胞壁ペクチンの架橋を促進し、細胞伸長を促していると考察している。