ことば
Online ISSN : 2424-2098
Print ISSN : 0389-4878
個人研究
増殖するハラスメント
―「ハラスメント語」を考える―
佐々木 恵理
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2019 年 40 巻 p. 36-53

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抄録

1980年代にセクシュアルハラスメントの概念が日本に導入され、短縮語の「セクハラ」はハラスメントの実態を一気に広めることに貢献した。その後、セクシュアルハラスメントの「ハラスメント」が切り取られて、多くの造語(ハラスメント語)が作られてきた。ハラスメント語には、セクシュアルハラスメントの中心的な概念である人権や差別の告発をすることばがある。また、不快感や配慮不足を表すことばや本来のハラスメントの意味を持たない記号化したことばも作られて、「ハラスメント」は乱用されている。今後もハラスメント語は増殖し続けるかもしれないが、さまざまな事象を「ハラスメント」という用語で表現するべきではない。作り出したことばは力(権力)を持つことを意識しながら、告発する新たなことばを探したい。

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© 2019 現代日本語研究会
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