抄録
汽水産車軸藻類シラタマモの節間細胞は、低張処理を行うと液胞内からKClを細胞外に放出することにより1時間以内に膨圧を回復する。今回は、膨圧調節中に細胞質を介して起こる液胞KClの流出が細胞質のK+、Na+、Cl-濃度に影響を与えていないかどうかについて時間経過を追って検討した。細胞質無機イオンの分析は、液胞灌流法によってそれらイオンを含まない液で液胞内を置換した細胞からイオンを抽出し、イオンクロマトグラフィーによって定量を行った。さらに、細胞質に多量に含まれるショ糖の濃度も酵素法により定量した。
細胞を低張処理(155 mOsm)すると、膨圧調節終了直後では細胞質K+濃度は75%減少し、以後増加し始め12~24時間後には元の濃度よりは少し低いものの回復した。その時間経過は膨圧調節によって一度は減少する液胞のK+濃度の回復と時間的に並行していた。また、細胞質Cl-濃度は調節終了後40%減少するものの、6~12時間後には回復する傾向が見られた。一方、細胞質Na+濃度は膨圧調節終了直後には約2倍に増加していたが、24時間後には元の濃度まで回復した。細胞質ショ糖濃度は膨圧処理終了直後には変化が見られなかったが(Okazaki et al. 1987 PCP 28:663-669)、以後徐々に減少して一定値に落ち着いた。
以上の結果は低張処理に伴う膨圧調節に伴って一時的に細胞質のK+とCl-濃度は減少し, Na+濃度 は増加するものの、調節機構が働いて回復することがわかった。