抄録
アルミニウム(Al)イオンは、根やタバコ培養細胞に吸着後、ミトコンドリア活性の阻害や活性酸素の誘発と同時に細胞伸長阻害や増殖阻害を引き起こす。Alによる細胞増殖阻害機構の解明を目的に、タバコ培養細胞(SL株)を用い、増殖に必要なショ糖および水の吸収に対するAlの影響について解析した。タバコ細胞をカルシウム溶液(3mM CaCl2, 3%ショ糖, pH 4.5 -5.0)に懸濁し、Al処理を行った。Al無添加のコントロール細胞では、処理開始後、ショ糖と水吸収が共に継続して見られたが、Alは両者の吸収を直ちに阻害した。コントロール細胞での糖吸収は、PCMBSおよびCCCPによってAlと同程度に阻害されることから、Alはショ糖・H+共輸送体を介したショ糖吸収を阻害すると考えられる。さらにAlによるショ糖吸収の阻害により水吸収阻害、ひいては細胞伸長阻害が起こるのであろう。Alによるショ糖吸収阻害は、Al処理開始後数時間は可逆的でありAl無添加の培地に再懸濁すると再開したが、9時間目以降は不可逆性が増し、24時間処理の細胞では全く回復が見られなかった。さらに、9時間目以降、細胞内で呼吸阻害、ATP含量低下、活性酸素誘発、増殖能の低下が進行する。以上の結果より、Alによる糖吸収阻害は直ちに水吸収を阻害し、細胞伸長を阻害するが、さらに細胞内の糖欠乏が進行するとミトコンドリアの機能低下により不可逆的な細胞死に至ると考えられる。