抄録
近年、フラビン結合青色光受容体としてBLUFタンパク質がバクテリアや単細胞真核生物で見つかっている。フラビンを非共有結合で結合するBLUFドメインは、青色光照射で吸収スペクトルが長波長にシフトし、暗所でもとにもどるフォトサイクルを示すことが知られている。また、全てのBLUFドメインに保存されたTyr-21残基がフォトサイクルに重要であることがRhodobacter sphaeroidesのAppAで示されているが、その詳細はわかっていない。シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803ではBLUFタンパク質であるSlr1694が正の走光性にかかわるセンサーとして機能していると考えられる。大腸菌で発現させたSlr1694や、そのホモログである好熱性シアノバクテリアThermosynechococcus elongates BP-1のTll0078が同様のフォトサイクルを示すことがわかっている。我々はTll0078において保存されている8番目のTyrをAlaに置換したタンパク質をHis-タグ融合タンパク質として、大腸菌で発現、精製を行った。精製したHis-Tll0078_Y8Aタンパク質はフラビンを結合していたが、青色光照射による吸収スペクトルの長波長シフトは観察されなかった。一方、長時間の光照射によって、370~470nmの吸収が減少し、暗所でゆっくりと回復した。この反応はフラビンの光還元が起きていると考えられる。His-Tll0078_Y8Aの分光学的解析の結果から、BLUFドメインのフォトサイクルの反応機構やフラビン近傍の構造について考察する。