抄録
糸状性シアノバクテリアAnabaena sp. PCC 7120は、培地中の窒素源が不足するとヘテロシストと呼ばれる細胞を10から15細胞おきに分化させ、窒素固定を行うことができる。ヘテロシストは、その機能が窒素固定に特化された細胞であり、機能的にも構造的にも栄養細胞とは大きく異なっている。ヘテロシスト分化の過程においては、様々な遺伝子の発現が時間的、空間的に調節されている。その調節機構の全容を解明するためには、ヘテロシスト分化に関わる遺伝子の同定が必要である。今回、我々は窒素源の欠乏による遺伝子発現の変化をoligo DNA microarrayを用いて解析した。解析には、野生株とhetR遺伝子破壊株を用いた。HetRは、セリンプロテアーゼ活性とDNA結合活性を持ち、ヘテロシスト分化の鍵となる調節因子と考えられている。hetR遺伝子破壊株においては、ヘテロシスト分化は初期段階で停止し、また、hetR遺伝子過剰発現株においては、培地中の窒素源が十分にある状態でもヘテロシスト分化が誘導される。野生株とhetR遺伝子破壊株における窒素欠乏による遺伝子発現の変化を解析し、ヘテロシスト分化に関わる新規遺伝子の同定を試みた。