抄録
我々は、シアノバクテリアを光照射下で熱処理するとブリーチングを起こし、菌体吸収スペクトルのフィコシアニン由来の吸収が減少することを明らかにした。このブリーチングは弱光下でも起こるが、低分子量熱ショックタンパク質(HspA)の構成的発現株では阻止された。しかし、そのメカニズムについては不明である。本研究では、このブリーチングのメカニズムと、HspAによるその抑制機構を明らかにすることを目的とした。
まず、ブリーチングを起こさないHspAを構成的に大量発現するSynechococcus ECT16-1株と、ブリーチングを起こすECT株(対照株)を熱処理後、細胞抽出液(可溶性タンパク質)をSDS-PAGEで解析したところ、後者ではフィコビソーム構成タンパクが著しく凝集したのに対し、ECT16-1株ではその凝集が抑制されていた。次に、精製フィコビリソームを過酸化水素存在下で熱処理すると、フィコシアニン由来の吸光度の減少とともにタンパクの凝集がみられた。精製HspAを加えることによりこの吸光度の減少やタンパクの凝集が阻止された。この結果は、ブリーチングがフィコビリソームタンパクの凝集によることを示し、さらにECT16-1株で見られたin vivoにおけるHspAによるブリーチングの抑制をin vitroで再現したものと考えられる。現在、HspAとフィコビリソームの相互作用の詳細を検討している。