抄録
枯草菌などのgroESLやdnaKオペロンの転写調節はCIRCE配列へのHrcAリプレッサーの結合による通常温度での転写抑制と熱ショック温度におけるHrcAの不活性化による抑制解除によって説明される。我々は、Synechocystis sp. strain PCC 6803株のhrcA遺伝子を破壊するとCIRCE配列を転写開始点周辺にもつ2つのgroEL遺伝子の転写が通常の培養温度において脱抑制されることを明らかにした。しかしながら、この脱抑制は完全ではなく同一の転写開始点から熱ショックおよび光照射に応答した転写誘導がさらに起こった。hrcA遺伝子破壊株では、groEL転写産物蓄積量は暗所で減少し、熱ショックまたは光照射下に移行すると迅速かつ著しく増加した。これらの転写誘導はDCMUの添加により顕著に阻害されたことから、光合成電子伝達系の関与が示唆される。以上の結果は、HrcAに依存しない他の主要な調節機構の関与を示唆するものである。groEL遺伝子の上流調節領域の塩基配列を比較したところ、シアノバクテリアに特異的な保存配列が見いだされ、ゲルシフト解析によりDNA結合タンパク質の結合配列が同定された。これらの配列がgroEL遺伝子の転写調節に寄与するかどうか明らかにするためレポーター系の構築を行い、現在解析を行っている。