抄録
ADP-riboseは有害なADPリボシル化を引き起こすため、その細胞内濃度はADP-ribose加水分解酵素(ADPRase)によって厳密に調節されている。Synechocystis sp. PCC 6803のゲノムにはADPRaseをコードする推定遺伝子が5つ存在し、ADP-riboseの濃度調節に機能分化があると予想される。各遺伝子からの組み換えタンパク質の酵素活性を測定したところ、Sll1054とSlr0920はADP-riboseを特異的に加水分解し、Slr1134はADP-ribose以外にNADHとFADも加水分解した。一方、Slr1690はほとんど活性を示さなかった。Slr1690はADPRaseに特徴的なNudixモチーフに複数の変異があり、この変異を保存されたアミノ酸に戻すと活性が増加した。したがって、Slr1690はADPRaseから由来していると考えられる。またクラスタリング解析から、Sll1054は細菌型のADPRase、残り4つは古細菌型のADPRaseから分子進化したことが示唆された。これらの遺伝子破壊株をADP-riboseを含む培地で生育させたところ、Δsll1054、Δslr0920は野生株に比べ著しく生育が阻害された。したがって、細胞内ではSll1054とSlr0920がADP-riboseの分解に主に貢献していると考えられる。