抄録
我々はSynechocystis sp. PCC 6803のフィトクロム様タンパク質遺伝子slr1212を破壊するとslr0228 (ftsH) を含む一群の遺伝子の暗所における転写量が低下することをこれまでに見いだしている。この後の解析により本破壊株において300から500 μmol m-2s-1の強光を12時間照射した後に観察されるカロテノイドの蓄積の割合が減少していることが明らかとなった。カロテノイドの蓄積には橙色 (615nm) および紫色 (395nm) の強光照射が有効であり、slr1212破壊株ではどちらの光条件下でもカロテノイドの蓄積は抑えられていた。また本破壊株に紫色強光を数日間照射すると細胞の退色が生じた。
本ラン藻のゲノム上にはslr1212遺伝子の隣にAraCサブファミリーレスポンスレギュレーター遺伝子slr1213が存在しSlr1212の下流で転写制御を行うことが予想された。slr1212とslr1213の二重破壊株は強光照射によるカロテノイドの蓄積が回復したことから、Slr1213はカロテノイド蓄積には抑制的な因子として働きSlr1212はSlr1213の活性を抑制することが示唆された。カロテノイドの組成分析によりslr1212破壊株においてミクソール配糖体の蓄積量が低下していることが明らかとなった。