抄録
ゲノム塩基配列が判明した生物種の全カロテノイドの同定は、生合成経路の決定だけでなく、生理学や系統分類学などの研究にも重要である。シアノバクテリアAnabaena sp. PCC 7120、Nostoc punctiforme PCC 73102などは主成分がβ-カロテン(40-60%, モル%)とエキネノン(20-40%)で、他にミクソール・フコシド、ケトミクソール・フコシド、カンタキサンチンが存在した(昨年本年会)。
本研究では、ゲノムプロジェクトが既に最終段階に入っているAnabaena variabilis ATCC 29413の全カロテノイドを同定した。上記の種とは違いミクソール(5%)および4-ヒドロキシミクソール(2%)は配糖体を形成しておらず、他にβ-カロテン(51%)、エキネノン(20%)、カンタキサンチン(22%)があった。カロテノイド生合成においてβ-カロテン・ケト化酵素(CrtO/W)はβ-カロテンをエキネノンばかりでなくカンタキサンチンにもできる。β-カロテン水酸化酵素(CrtR)はβ-カロテンには作用せず、デオキシミクソールにのみ作用する。このように他のシアノバクテリアと同じ機能をもつ酵素が、種により基質特異性に差異があることが、カロテノイドの多様性を生じると考えられる。また本株は糖転移酵素の欠損のためカロテノイド配糖体を形成できないと考えられるが、他のシアノバクテリアでもその酵素の実体が捉えられていない。本株はカロテノイド配糖体の機能を研究する上で有用である。