抄録
これまでに、複数種のシアノバクテリアのRNAポリメラーゼ精製法が報告されているが、一様に多くのステップを必要とし煩雑である。今回我々は、Synechocystis sp. PCC6803のRNAポリメラーゼにHisタグを付加し、これを用いたシアノバクテリア細胞からのRNAポリメラーゼ簡易精製法を確立したので報告する。まず、β'サブユニット構造遺伝子(rpoC2)の3’末端及びその下流域を含む約1.5-kbpのDNA断片を大腸菌内にクローン化し、RpoC2のC末端にHisタグが付加されるよう配列を改変した。さらに、rpoC2下流にクロラムフェニコール耐性遺伝子を挿入し、このプラスミドで野生株を形質転換し、染色体上のrpoC2遺伝子にHisタグ配列の付加された形質転換体を得た。この株では、全ての染色体上のrpoC2遺伝子が改変型に置換されており、増殖への影響も見られなかったことから、RpoC2へのHisタグ付加は細胞に大きな影響を及ぼさないと考えられる。変異株菌体を破砕した超遠心上清(20 mM Tris-Cl pH 8, 0.5 M NaCl, 5% glycerol)より、Niカラムを用いてHisタグ付加蛋白質を精製した。目的の蛋白質は20-50 mMイミダゾールで溶出し(収量:779 μg/1.9 g菌体)、抗RNAポリメラーゼ抗体を用いたウェスタン解析の結果、全サブユニット(β', β, γ, α, σ)を含んでいた。また、in vitro転写解析により、同精製酵素が大腸菌Eσ70コンセンサス型の-10及び-35配列を持つtacプロモーターを認識することを示した。