抄録
Synechocystis sp. PCC6803 は光独立栄養での生育も可能であるが、1日5分程度の光照射によりグルコースを炭素源とする従属栄養的生育が維持される。また、その従属栄養的生育を開始する前の光独立栄養的生育が完全暗所での増殖に強く関連する(日本植物学会年会、2001)。さらに、sll0018など、解糖系関連酵素をコードする複数の遺伝子で暗所での発現が抑えられ、光照射下で増加することを報告した(日本植物生理学会年会、2004)。
そこで、解糖系関連酵素の活性と、グルコース及び光照射との関係を調べた。その結果、fructose-bisphosphate aldolase(FBA)の活性はグルコース添加により増加し、光照射によりさらに活性が増した。これは、増殖速度と高く相関する。また、前培養の光独立栄養条件で対数的に生育している細胞ではFBA活性が高く、暗所従属栄養条件に移してもグルコースを利用して増殖を続けることができた。これに対し、生育が進行して定常期に近づいた細胞のFBA活性は低下し、暗所従属栄養条件に移してもほとんど増殖ができなかった。
さらに、SDS-PAGEにより、従属栄養的条件下で生育した細胞のタンパク質組成を調べたところ、1日5分間の光照射により、約30個のスポットに発現の誘導が観察された。このタンパク質をTOF-MSにかけ、約10個のタンパク質を同定した。