抄録
筆者らはこれまで、低温馴化中に量的変化を伴う多数のシロイヌナズナ細胞膜タンパクを同定してきた(Kawamura and Uemura, 2003)。その中でも低温馴化初期に著しく増加するsynaptotagmin様タンパク質は、膜融合による細胞膜修復に深く関与する細胞膜タンパク質であることが知られている。動物細胞のみではあるが、これまで細胞膜損傷とその細胞膜修復機構について、盛んに研究が行われてきた。細胞膜修復には必ず細胞外にカルシウムが必要であり、また壊れた細胞膜を修復するために内膜小胞が使用される。さらに、細胞膜と小胞が融合するためにはSNAREsとsynaptotagmin familyが少なくとも必要であることも示されている。これまでの植物凍結傷害の研究では、細胞膜の傷害回避機構の観点からは研究されてきたが、細胞膜修復という観点からは全く報告がなかった。しかし動物分野での研究を考慮すると、凍結傷害による細胞膜損傷が迅速に修復されれば、生存可能であることは十分に予想される。シロイヌナズナ葉より単離したプロトプラストを用いて、凍結時において細胞外からカルシウムを取り除いて耐凍性試験を行ったところ、その凍結耐性は著しく低下した。従って、植物細胞の凍結耐性は、少なくとも細胞外カルシウムに大きく依存すると考えられる。(本研究は日本学術振興会の援助の下に行われた)