抄録
Alternaria alternata 102よりタバコBY-2細胞に対して活性を示す糖質性エリシターを単離し、その部分構造が1,3-1,6-グルカンであることを昨年の年会で報告した。今回、詳細な構造の解析として、還元末端分析、NMRによるグリコシド結合様式の解析、およびMALDI-TOF/MSによる質量分析を行なった。その結果、本エリシター活性成分は、重合度8から17を主とするβ-1,3-1,6-グルカンオリゴ糖の混合物であることが明らかとなった。
BY-2細胞において、グルカンエリシターによって誘導されるクラスIVキチナーゼは、SAおよびMeJA処理では誘導されない。そこで、エリシター応答シグナリングの解析を目的とし、マイクロアレイ解析によるグルカンエリシター応答遺伝子群の解析を行った。ラミナリン(β-1,3-グルカン)またはA. alternata培養上清より得られたβ-1,3-1,6-グルカンエリシターを含む糖質画分でBY-2を処理したところ、初期応答(1h)における、約300のグルカンエリシター誘導遺伝子群が認められた。この中で転写因子と推定される15遺伝子に着目し、2,4-D、ABA、BA、MeJA および SA初期応答遺伝子群のマイクロアレイ解析結果と比較したところ、グルカンエリシターに特異的に応答する14遺伝子を見出した。