抄録
白葉枯病は東南アジアおよび日本の西南暖地でのイネの主要病害であり,多くの研究が国際的に行われている.白葉枯病に対する病害抵抗性には真性抵抗性と圃場抵抗性があり,真性抵抗性に関する研究では近年2種類の遺伝子( Xa21, Xa1 )が単離されているが,未だ圃場抵抗性に結びつく主要な遺伝子は単離されていない.
「日本晴」は日本稲の中で白葉枯病に対する圃場抵抗性を持つ品種である.我々は「日本晴」ゲノム内のレトロトランスポゾン Tos17 を増殖させた突然変異集団(ミュータントパネル)に白葉枯病菌を接種することによって,白葉枯病に罹病性である系統を探索した.2年間で3,000系統の突然変異集団をスクリーニングした結果,白葉枯病に罹病性の突然変異体を20系統選抜できた.ゲノミックサザンによる各突然変異個体中の Tos17 の分布及び後世代への白葉枯病罹病性の遺伝を調査することによって,このうち2系統が Tos17 由来の突然変異であることを推定した.これらの白葉枯病罹病性系統からレトロトランスポゾンによって破壊された遺伝子を特定することによって,これまで未知であった白葉枯病圃場抵抗性のメカニズムに関わる新規遺伝子を単離し,その機能を解明することができると考えられる.