抄録
高等植物が病原菌の感染に対して示す抵抗性反応の一つに活性酸素の生成がある。活性酸素は細胞壁の強化材料、抵抗性応答へのシグナルとして機能するほかに、試験管内では抗菌性を有する。これに対して病原菌がどのような防御策をとっているかについては知見が乏しい。我々はイネ(日本晴、抵抗性遺伝子Pi-a)培養細胞がいもち病菌胞子を接種することによって過酸化水素を生産すること、定法で調製した胞子懸濁液中に過酸化水素消去活性が存在することを見いだした(田部ら、本学会)。この消去活性はいもち病菌糸の培養濾液中にも存在した。この活性は100℃処理で消失し、電子受容体を必要としないことからカタラーゼ様の酵素によるものと考えられた。In gelアッセイにより、日本晴に非親和性、親和性いずれのレースの培養濾液からもカタラーゼ活性が検出された。現在この酵素の精製を試みている。