2021 年 50 巻 1 号 p. 34-37
27年前に胸部放射線治療歴がある64歳女性.3年前から慢性的な血性心嚢液の貯留を認めドレナージを繰り返したが,しだいに全身浮腫と夜間呼吸困難が増悪した.心膜肥厚と右室圧波形のdip and plateau patternより収縮性心膜炎と診断し,心膜切除術と心外膜切開術(waffle procedure)を施行した.しかし,病理組織所見から悪性心膜中皮腫と診断,術後17日目に死亡した.悪性心膜中皮腫は非常に稀で予後はきわめて不良な疾患であり,今後増加することが予想される.胸部放射線治療歴があり原因不明の血性心嚢液貯留を繰り返す症例において,本疾患は念頭に置かなければならない.