抄録
トマト(Lycopersicon esculentum Mill.)の幼苗を熱ショックを与えることによって灰色かび病(Botrytis cinerea)に対する抵抗性が誘導されることを見いだし,その機構について解析を行った.幼苗を45℃の温湯に2分間浸漬し,24時間後の本葉第1ならびに第2葉を採取して密閉容器に入れ,トマト灰色かび病菌の胞子を接種し結果,無処理の葉では接種部分を中心として速やかに水浸状の病徴が拡大したが,熱ショック処理した葉では無病徴か病斑は極めて小さかった.この抵抗性は処理後,日数の経過とともに消失した.熱ショック処理後のトマト葉中のサリチル酸濃度をHPLCにより測定したところ,処理12時間後からサリチル酸が蓄積し始め,24時間後にピークに達したことから,サリチル酸がこの抵抗性の誘導に関与している可能性が示唆された.現在,サリチル酸の必要性ならびにPR遺伝子等の発現について検討中である.