日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ホウ酸は酵母においてスプライシングを阻害することを通じて毒性を発揮する
*野澤 彰藤原 徹
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p. 410

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抄録
 ホウ素は植物の必須元素であるが、過剰量のホウ素は植物の生育を阻害する。ホウ素の毒性機構を分子レベルで調べるために、酵母にホウ酸耐性を付与するシロイヌナズナ遺伝子の探索を行い、AtRBP47c'などのスプライシングへの関与が考えられる遺伝子を単離した。そこで、酵母においてスプライシングに対するホウ酸の影響をRT-PCR法により解析した。酵母ゲノム中のイントロンを持つ遺伝子の約1割にあたる20個の遺伝子について調べた結果、リボソームタンパク質をコードするRPL7Bのスプライシングがホウ酸により阻害されることを発見した。酵母ゲノム内にはRPL7AというRPL7Bのパラログが存在し、これらの二重破壊株は致死となることが知られている。スプライシング阻害を受けないRPL7Aを破壊した株ではホウ酸耐性が低下していたのに対し、スプライシング阻害を受けるRPL7Bを破壊した株ではホウ酸耐性に変化は見られなかった。すなわち、RPL7A破壊株ではホウ酸によるRPL7Bのスプライシング阻害の結果RPL7タンパク質量が低下し、生育が阻害されたと考えられる。また、ブランチポイントのコンセンサス配列内の塩基置換によってホウ酸によるスプライシング阻害の程度が異なることを見いだした。本研究は、ホウ酸毒性機構を初めて分子レベルで明らかにしたものである。
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© 2005 日本植物生理学会
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