抄録
これまでにイネ完全長cDNAプロジェクトによって32,000以上のcDNAクローンが得られている。cDNA配列をゲノムDNA配列(TIGR Pseudo ver2)にマッピングして、解析した結果、これらのうち1094クローンでは対応するゲノム配列が複数の染色体に分かれていた。これらからオルガネラゲノムに由来するものや実験上の副産物を除くと、681クローンで異なる遺伝子座からの転写産物がtrans-splicingによって結合されて生成したものである可能性が考えられた。そこでRT-PCRにより、その転写産物がtrans-splicingによるものかどうかの検定を試みた。その結果、これらのクローンの1つである AK100704では、完全長クローンとして報告されているものとは異なる部位で、異なる染色体由来の転写産物が結合した断片が検出された。また、これと同じ構造を有するRNA断片は葉、茎、根、穂などの様々な組織由来でも検出された。一方、これに対応するゲノム配列は第1染色体と第5染色体に分かれてコードされており、1つの遺伝子座に由来するものではないと考えられた。これらの結果からこの転写産物では、転写後のtrans-splicingが起こっている可能性が示唆された。