抄録
シロイヌナズナのMADS-box転写因子AGL24とSVPは、進化系統学的に非常に近縁であるにも関わらず、AGL24は花成促進に、SVPは花成抑制に働く。本研究では、AGL24とSVPの転写制御標的遺伝子を同定し、両者の遺伝子発現調節と花成制御との関連性を明らかにすることを目的とした。まず始めに、マイクロアレイを用いて、AGL24やSVPの変異体および過剰発現植物体の茎頂組織における遺伝子発現を、野生型の遺伝子発現と比較した。その結果、野生型と比較して2倍以上発現変動していた遺伝子は、AGL24過剰発現植物体で56個、SVP過剰発現植物体で171個、agl24で7個、svpで 3個であったが、そのほとんどが機能未知であった。このうち、AGL24とSVPの過剰発現植物体の両方で共通して発現が増加あるいは減少した遺伝子が33個存在した。これは、両者が過剰に存在することで非特異的に同じシス配列に結合し、本来の標的ではない遺伝子の発現に影響を及ぼしたことが考えられる。また、これらの植物体間で異なる発現変動の傾向を示したものはSOC1だけであった。SOC1は花成促進に働くMADS-box遺伝子で、その発現は、AGL24過剰発現植物体とsvpで増加し、SVP過剰発現植物体で減少していた。このことから、AGL24とSVPがSOC1の発現制御を通じて、花成を逆に制御している可能性が示唆される。