抄録
モデル高等植物であるシロイヌナズナにおいて多くの時計関連因子が見いだされてきた。中でも、疑似レスポンスレギュレーターと呼ばれる一連のタンパク質因子APRRsは興味深いファミリー因子群である。なぜならば、シロイヌナズナの時計構成因子として同定されたTIMING OF CAB EXPRESSION1 (TOC1)がそのファミリーに含まれるからである。さらに、概日リズムと光シグナル情報伝達機構の関連性を分子レベルで理解するうえで、APRR1/TOC1だけでなく、他のAPRRファミリー因子も重要であることを示す証拠が蓄積している。今回、光シグナル及び概日時計により制御されるAPRR9プロモーターの調節シス領域の解析を行った。そのために、T-DNA挿入変異植物体の解析に加えて、シロイヌナズナ培養細胞(T87細胞)にAPRR9プロモーター::ルシフェラーゼ(LUC)融合遺伝子レポーターを導入して解析を行った。これらの解析から、APRR9プロモーター上流に少なくとも二つの別々の調節シス領域を同定した:L領域と名付けた光シグナル応答配列とR領域と名付けた概日リズム形成に必要な配列である。加えて、L領域を介したAPRR9の光誘導には、直接か間接かは別として、APRR1/TOC1が深く関わっていることが示唆された。