抄録
イネ完全長cDNAプロジェクトで得られた完全長配列データは,アジレントの22K oligoarrayのプローブ設計に活用されており,そのアレイデータの再現性や信頼性は他の研究者によりすでに報告されている.
マイクロアレイ実験の利点は,数回の実験で多くの遺伝子の発現情報を得ることが可能というところであり,それがこの実験の目的でもある.しかしこれは逆に,研究者にとって重要な遺伝子が何であるかということを判断することを困難にするという大きな問題も抱えている.この発表ではこの問題点を解消する方法の1つとしてデータの共有とQTL情報の利用について述べる.
1つの例として低温ストレスについて,この二つの方法で,低温ストレス耐性遺伝子の絞込みを行ってみた.実験により低温ストレスにより発現が変わった遺伝子は1300ほどあった.そのうち,当研究室にあるデータとの比較を行い,低温でのみ発現の変わる遺伝子を調べたところ,約300ほど存在することが分かり,候補遺伝子を約1/4までに候補遺伝子を絞り込めた.更なる候補遺伝子の絞込みのためにQTL情報を利用した.GRAMENEサイトから低温ストレス耐性のQTLの情報を獲得し,その領域内にある遺伝子と,発現の変わった遺伝子を比較したところ,21個まで絞り込むことができた.
このようにアレイデータの共有化と従来から蓄積されているQTL情報を用いる事で,マイクロアレイの解析の効率化を図ることができる.